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服を売るだけじゃない !? パタゴニアがソーラーシェアリングに参画!
2021/03/05
一般企業のなかにも、ソーラーシェアリングに参画するところが出てきている。アウトドア衣料品のグローバル企業、パタゴニア(本社:米国)もその1社だ。渋谷ストアでは、ソーラーシェアリングで発電した電気を使用。発電事業に参画して、再エネ100%を目指す。
トップ画像:パタゴニア渋谷の店内 出典:パタゴニア日本支社
地球を救うためのビジネス
ソーラーシェアリングに関心を寄せているのは、発電事業者や農業関係者だけではない。電力の大口需要家である一般企業のなかにも、ソーラーシェアリングに参画するところが出てきている。アウトドア衣料品のグローバル企業、パタゴニア(本社:米国)もその1社だ。同日本支社に聞いた。
パタゴニアは、「私たちは故郷である地球を救うためにビジネスを営む」をミッションステートメントとして掲げ、2025年までに「サプライチェーンを含む事業全体でカーボン・ニュートラルを達成すること」を目指している。その戦略として重視しているのが、再生可能エネルギーへの転換だ。
具体的には、「2020年末までに、世界的に所有・運営している場所で使用する電力の100%を再エネから調達する」。これを実現するために日本支社では、運営効率を高めて省エネルギーに努めるとともに、一部店舗に太陽光パネルを設置して自ら再エネ電力を生みだしている。電力会社についても、再エネ比率の高いところに積極的に切り替えてきたという。
千葉県匝瑳市から始まった
ソーラーシェアリングの一例。アウトドア衣料品大手パタゴニアによる投資案件。運営は市民エネルギーちばが担う。出典:パタゴニア日本支社
そうした流れのなかで、パタゴニア日本支社は、米国本社とも検討を重ねた上で、ソーラーシェアリングの新規プロジェクトに投資することを選択した。2018年には、試験的プログラムとして投資した、市民エネルギーちばの運営する50kWソーラーシェアリング発電所(千葉県匝瑳市)が運転を開始。発電した電気は、みんな電力のブロックチェーン技術を活用して、国内最大規模の直営店であるパタゴニア渋谷ストアで使用している。
この成功を受けて、さらに、市民エネルギーちばが運営する360kWプロジェクトに参画。西日本でも、有機農家である坪口農事未来研究所が運営する4基合計269kWのプロジェクト(兵庫県豊岡市)に参加している。
環境面でのベネフィット
パタゴニア日本支社は、ソーラーシェアリングの意義を次のように話す。
「ソーラーシェアリングは、再エネの生成に加え、有機農業との組み合わせによって、二次的、三次的に、地域社会そして環境面でのベネフィットをもたらします。また、大規模な森林伐採などの自然破壊を伴うメガソーラー発電プロジェクトと異なり、既存の農地を活用することで地域社会や生態系に対する影響を最小限に抑えたプロジェクトです。
その上で、クリーンな電気を生成することで化石燃料への依存を減らし、健康的な食糧の供給と農村地域の雇用を生み出すことが可能なソーラーシェアリングは、とても望ましい仕組みだと思います」。
顧客への発信力も向上
ソーラーシェアリングは社員教育にも役立っている。パタゴニアでは、コロナ禍の前には、社員グループによる現地訪問も行われていた。「ソーラーシェアリングや背景にあるエネルギー問題のレクチャーを受けた後に、農業やパネル設置などを体験することで、社員の意識が向上するとともに、店舗においてはお客様への発信力が高まった」とのことだ。
ソーラーシェアリングの一層の普及に向けて、電力需要家である一般企業の理解と参画は大きな力となる。パタゴニア日本支社の取り組みは、その先駆けとして評価されるものだ。これからの成果にも注目していきたい。
SOLAR JOURNAL vol.35(2020年秋号)より転載