世界の平均気温が史上最高を記録、目の前に迫る温暖化の危機

世界の平均気温が史上最高を記録、目の前に迫る温暖化の危機

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世界の平均気温が史上最高を記録、目の前に迫る温暖化の危機

暑い!梅雨明け前のはずなのに、首都圏でも40度近い気温が続く(7月中旬時点)。一方、線状降水帯が、九州から北陸、東北と断続的に襲う。世界に目を向けると、7月初旬には『史上最も暑い一週間』が記録された。欧州、中国などいたるところで、軽く40℃を超える熱波と豪雨が続く。温暖化の進行のスピードは、予測を大きく上回り、“恐怖”を感じると表明する気候学者さえいる。温暖化は、ついに地球を本当の危機に陥れる実力行使の段階を迎えたように見える。今回のコラムでは、いくつかのデータを示しながら、私たちが直面している気候の変動リスクを共有したいと思う。

連日更新された7月初旬の世界の平均最高気温

 2023年7月の初旬、7月3日から9日までは、地球の平均気温が史上最高となり最も暑い週だったことがわかった。
 Twitterなどで各種の拡散がされたが、ちなみに気温の高い順で見ると以下である。

  1位 7月6日:17.23℃
  2位:7月7日:17.20℃
  3位:7月4日:17.18℃
  4位:7月5日:17.18℃
  5位:7月8日:17.12℃

 17℃突破の7月4日以来、3日連続で最高を更新し、6日には、17.23℃が記録された。これまでの最高は、2016年8月13日と2022年7月22日の16.92℃だったそうで、17℃を突破したこと自体が、大ニュースであった。

世界の平均気温の変化と最も暑い週(2023年7月5日~9日) 出典:Climate Reanalyzer他

 世界の気候のデータを集め分析するアメリカのClimate Reanalyzerが、日々発信している平均気温の変化を見てみる。上図の“もやっとした灰色の帯”は、1940年以来の各年の気温の推移がまとまって見えた結果である。
 その上側に、色付けされた2016年(青)、2019年(オレンジ)、2022年(黄)の折れ線グラフが載っているが、2023年(黒)が特に高いことがわかる。今年は、近年の中でも際立つ異常高温の年になっている。

7月14日の世界の気温分布 出典:Climate Reanalyzer

 上図は、7月14日の世界の気温を色分け表示している。
 鮮やかな赤は30℃前後、比較的濃い赤は35℃のエリアで、赤道から南北の広い範囲をほぼ覆っている。日本列島を含め、欧米の中心部もほとんどが高温域内である。

九州での線状降水帯の発生(2023年7月10日) 出典:tenki.jp

 世界が最高気温を更新していた同じ週に、日本では九州地方北部を中心に線状降水帯が頻発し、大きな被害をもたらしている。中国では、40度を超える高温と大量の雨による洪水が地域を分けて同時に発生した。また、スペインなど欧州南部では雨が降らず干ばつが続いている。
 以前から言われていた通り、地球温暖化は熱波だけでなく、干ばつか洪水という極端な天候をもたらしている。

不均一な温暖化と科学者が隠さない1.5℃越えの“恐怖”

 世界の熱波など異常気象に関する今年の報道は、これまでにないボリュームで繰り返されている。
 中でも、欧州の高温は特筆される。国連の世界気象機関(WMO)と欧州の気候監視ネットワーク、コペルニクスが6月に発表した報告書によると、昨年の欧州は観測史上最も気温の高い年になったという。産業革命前に比べておよそ2.3℃上昇した。氷河の融解や干ばつが続き、作物にも大きな被害が出た。別の調査では、高温による死亡者が6万人に達したとされる。
 熱波は今年になってさらに悪化、昨年を上回る勢いである。
 各都市で記録的な高温が観測されている。7月に入り、アテネ43℃、マドリード46℃、セビリア47℃、ローマ46℃、ミラノ42℃、ドイツでも南部のバイエルン州で16日に38.8℃の今年最高に達した。また、北大西洋の海面温度は、かつてない高さが続いている。
 温暖化はどの場所でも同じように進むわけではないと科学者は指摘する。海よりも陸で、低緯度より高緯度でそして冬に、不均一に起きるとされている。欧州での変異は、その証明のひとつかもしれない。
 世界の科学者たちは、1980年代から地球温暖化の研究に当たり出来るだけ冷静な表現を努力してきたという。しかし、予測をはるかに超えた現状に、恐れの表明を隠さなくなっている。1.5℃の閾値(しきいち)を越えた時には、突然、不可逆的、危険な影響を引き起こす可能性があると強く警戒を呼びかけている。

地球を持続可能にするために、私たちにできること

 1.5度以内の達成は、現状のままでは厳しいとの声が多く聞かれている。

国連事務総長アントニオ・グテーレス氏のメッセージ 出典:国連

 一方で、国連のグテーレス事務総長は、7月初めに次のように表明している。
「科学は、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑えることは、まだ可能であると示している。しかし、それには大規模で今すぐの世界的努力が必要です。」

 気候変動に関する世界的な意識調査が、「気候不安」をテーマに行われ、その結果が発表されている。その第一問では、「気候変動が人びとや地球を脅かすことを心配しているか」を問われ、日本人の答えは特徴的な傾向を示している。

国際比較版、気候不安に関する意識調査 出典:電通総研コンパス

 日本は、「心配していない」が調査11か国中で最も高い14.6%となった。
 「心配している」は、合わせて8割を超えていて、他国よりやや低いだけに見えるが、内訳を見ると少し違っていることがわかる。
 「極度に心配」と「とても心配」を合計しても十数%で、他国が5割前後から8割を超えているのに対して、非常に少ない。また、「少し心配」が3分の1を占める。つまり、気候変動を強く不安に思う日本人の割合が他国に比べて極端に小さいことがわかる。
これは、どういうことであろうか。温暖化の知識に欠ける、現状認識が不足、あきらめている、無関心、災害に慣れている、などいろいろ考えられる。
 別の調査で、「人間が気候変動への対応に寄与できるか」と聞かれた際、世界各国の平均では、YESが8割近くあったのに対して、日本では5割をわずかに超えた程度であった。また、どちらでもないが3割あった。これを考えると、「あきらめ」と「無関心」前者の結果のバックグラウンドだと考えざるを得ない。これは、前提としての危機感の不足に加え、日本政府の気候変動に対するはっきりしきれない考え方や対応策が影響している可能性もある。

 再度、国五連事務総長の言葉を持ち出さなくとも、このままの状況でよいわけがない。
 政府の再エネ施策が中途半端であることは、やれる余地が残っていることにもなる。太陽光発電をはじめとする再エネの導入余地はまだある。私たちの日常での省エネやエネルギー効率化は、細かい積み重ねであっても、集まれば必ず大きな結果に結び付く。やれることはある。
 恐れを感じることは恥ずかしいことではなく、あきらめからは何も生まれない。

プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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