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日本におけるコーポレートPPAの先行事例3選! イオン・ヒューリック・村田製作所
2022/09/18
日本でも2020年代に入ってから、脱炭素経営を目指す企業が相次いでコーポレートPPAを締結しはじめている。すでにオンサイトPPAは全国各地で多数にのぼる。オフサイトPPAも公表されているものだけで昨年までに約15社、今年はすでに20社以上(推計)の需要家が契約を結んでいる。需要家の業種は、流通・製造・不動産・金融・ITサービスなど多岐にわたる。
メイン画像:誉田CFCイメージ 出典:イオン
オンサイトPPA:イオン(流通業)
店舗屋根を有効活用。先進の大型自動倉庫でも
イオンは、グループ各社の商業施設のスペースを有効活用し、太陽光発電の利用拡大を進めている。従来より自家発電に注力してきたが、2019年からはコーポレートPPAにも取り組んでおり、同年3月「イオンタウン湖南(滋賀県)」においてオンサイトPPAの導入を開始した。イオンタウン湖南の屋根スペースを提供し、発電事業者(MULユーティリティーイノベーション)が1MWを超える発電能力のある太陽光パネルを設置。そこで発電された電力をイオンタウンが購入し、同施設で使用する。
2021年4月には、イオン初の顧客フルフィルメントセンター「誉田CFC(千葉県)」の屋根に3MW超の太陽光発電設備をPPAにより設置することを発表した。誉田CFCは、イオンが2023年開業に向け準備している、次世代型ネットスーパーの中心的な施設で、最新のAIとロボットを駆使した最先端の大型自動倉庫となる。誉田CFCでは、屋根上の太陽光発電による電力を、施設運営に利用するとともに、大型蓄電池(容量300kWh)を設置することで再生可能エネルギーを最大限活用することを目指す。
フィジカルPPA:ヒューリック(不動産)
自社グループ完結型コーポレートPPAを実現
出典:ヒューリック
ヒューリックは、2020年からフィジカルPPAによる再エネ電力を利用している。最初の案件は、埼玉県に太陽光発電所を新設し、そこで発電した電力を東京の本社ビルで消費するというもの。公表されているフィジカルPPAとしては、日本初の事例となる。ヒューリックでは、これを皮切りに積極的にコーポレートPPAを展開しており、2024年にRE100達成(自社で使用する電力の100%再エネ化)、2030年までに全保有建物からのCO2排出量ネットゼロを目指す。
ヒューリックのコーポレートPPAの特徴は、自社グループ完結型になっているところにある。EPCを手掛けるアドバンスとの協業により再エネ発電設備を新規開発・自社所有し、発電した電力を子会社のヒューリックプロパティソリューションが小売電気事業者として買い取り、ヒューリック本社を含むグループ各社に販売するという流れだ。これにより、非FITでの発電事業の採算性確保と、建物の再エネ化にかかる費用負担軽減の両立を図り、市場の影響を受けない電気の売買スキームを実現している。
バーチャルPPA:村田製作所(製造業)
新設の太陽光発電設備から「環境価値」を取得
出典:村田製作所
バーチャルPPAは、日本ではまだ始まったばかりであり、本格運用されている案件を見出すことは難しい。そうしたなか村田製作所は、バーチャルPPAスキームにより、三菱商事から2025年度までに7万kWhの再エネ電力を調達することに合意したと発表した(2022年6月24日)。
村田製作所は、三菱商事が建設する太陽光発電所に由来する環境価値を「非FIT非化石証書」として購入する。発電設備はすべて新設であり、追加性のある再生可能エネルギーの調達となる。このバーチャルPPAスキームにより、将来的には3億kWh分の再エネ電力調達を目指すという。
あわせて、蓄電池活用による調整力の増強を図る。需給調整市場への参画実績を持つ三菱商事を通じた同市場への参加を見据え、村田製作所の工場に設置する蓄電池を活用し、調整力供出の実証を共同で実施。村田製作所の生産工場に導入する独自の電力制御技術と三菱商事の電力事業の知見を組み合わせ、再エネの導入拡大にともなって発生する系統不安定化の解消にも貢献していく考えだ。
国の補助金も充実。
コーポレートPPA案件創出を後押し
コーポレートPPAに対しては国も積極的だ。昨年度より、経済産業省と環境省がそれぞれ補助金を出している。
経済産業省のものは「需要家主導による太陽光発電導入加速化補助金」といい、昨年度補正予算で135億円、今年度予算で125億円が組まれている。対象は、“非FIT・非FIP・非自己託送による需要地外に設置される2MW以上の新規案件”とされており、オフサイトPPAはこれに該当する。
環境省は「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業)」として、昨年度補正予算113.5億円、今年度予算38億円を用意する。オンサイトPPA・オフサイトPPAそれぞれに予算枠が設けられ、公募が行われている。下記はその事業の1つで、先ごろ、昨年度の実施結果が公表された(下記)。
環境省「オフサイトコーポレートPPAによる太陽光発電供給モデル創出事業」
2021年度実施結果
●補助対象案件(需要家×発電事業者×小売電気事業者)
①セブン‐イレブン・ジャパン×北陸電力ビズ・エナジーソリューション×北陸電力
②清水建設×クリーンエナジーコネクト×スマートエコエナジー
③花王、高砂熱学工業×みんなパワー×みんな電力
④三井住友トラスト総合サービス×みんなパワー×みんな電力×三井住友トラスト・パナソニックファイナンス(リース事業者)
⑤花王×ジェネックス×みんな電力
⑥アミタ、花王×みんなパワー×みんな電力
⑦ならコープ×おひさまPPA×CWS
⑧シナネンホールディングス、シナネンエコワーク×クリーンエナジーコネクト×シナネン
⑨第一生命保険×クリーンエナジーコネクト×オリックス
⑩ほしゆう×IQg×IQg
●導入設備、事業の効果
●採択された需要家・発電事業者の声(メリットと課題)
<需要家>
オフサイトコーポレートPPAの実施を希望した理由(メリット)
●RE100やSBT、2050年カーボンニュートラル等の達成に向け、追加性のある再エネ電力を長期的・安定的に直接調達できるため。
●自社敷地内のみでは太陽光パネルを設置する面積に限界があるところ、オフサイトコーポレートPPAであれば限界を超えて用地確保が可能なため。
●需要施設の近隣に発電所を設置することで、電力の地産地消を実施することが可能なため。また、発電所を設置する土地の賃料を支払うことで、地域貢献にもつながるため。
オフサイトコーポレートPPAを実施するにあたっての課題
●発電所故障のリスクや機会損失の可能性等を考えると、長期契約はハードルが高い。また、従来の電力契約よりも契約が複雑でわかりにくい。
●託送料金や再エネ賦課金がかかるため、電力調達コストが高くなってしまう。
<発電事業者>
オフサイトコーポレートPPAの実施を希望した理由(メリット)
●RE100やSBT、2050年カーボンニュートラル等の達成に向け、追加性を求める需要家のニーズがあると考えたため。
●FIT制度後の発電事業に関するノウハウを蓄積するため。
●オンサイトPPAでは発電量と需要量が必ずしも一致せず、より多くの再エネ電力を調達したい場合や逆に再エネ電力を余らせてしまうといった課題があったところ、オフサイトコーポレートPPAでは託送によりそれらの課題を解決できるため。
オフサイトコーポレートPPAを実施するにあたっての課題
●従来の電力契約と契約内容や電力供給の進め方等が異なるため、これに対応する発電事業者や小売電気事業者の負荷やリスクが大きい。
●FIT制度よりも収入の予見性が低いため、発電設備建設のための資金調達が大変である。