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再エネの拡大を陰で支える「調整力」とは? 需給調整市場の役割を知る
2022/07/10
出力が天候などに左右される太陽光や風力といった再エネの拡大には、その変動を補う「調整力」が必要となる。その調整力を取引するのが、2021年に開設された「需給調整市場」だ。調整力や需給調整市場の果たす役割を解説する。
再エネの拡大に必要な調整力
電気の需給を柔軟にコントロール
まず、電気は貯めておくことが難しい財だ。そのため、発電と同時に消費しなければならない。つまり、電気の供給と需要は常に一致させる必要があるということだ。仮に、電気の需要が常に一定であれば、供給側である発電出力のコントロールは容易だが、実際にはそういうことはない。
また、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは発電出力が天候などによって大きく変動する。電気の供給と需要は常に合致させなければならないため、再生可能エネルギーによる発電量が見込めないときには、別の発電方法によって減少する供給力を補うことが求められる。
逆に、再生可能エネルギーなどが多く発電して電気が余剰しそうなときには、より多くの電気を消費するなどして需要側をコントロールし、電気の供給と需要を一致させることも考えられる。
このように、供給力を補ったり、必要に応じて需要を増減させたりする機能を「調整力」と呼ぶ。再生可能エネルギーを普及させるには、電気の需給を柔軟にコントロールする調整力が欠かせない。
具体的に調整力にはどのようなものがあるかというと、出力の増減が容易な火力発電が挙げられる。電気の需給の状況に応じて、出力を増やしたり減らしたりして調整力を提供する。
ほかに、需要家によるデマンドレスポンスも調整力の1つとされる。デマンドレスポンスというと節電のイメージが強いが、自家発電設備による自家消費やエネルギーマネジメントによって調整力を生み出すこともできる。
調整力を取引する需給調整市場
広域調達によりコストを3割低減
こうした調整力を取引する場が、2021年4月に開設された「需給調整市場」だ。需給調整市場ができる前は、各地域の一般送配電事業者がそれぞれ公募を行い、調整力を集めていた。新設された需給調整市場では、電力エリアの垣根を越えて、調整力を1つのマーケットに集約することで効率化を目指す。
(需給調整市場の運用イメージ。出典:経済産業省)
経済産業省によると、2021年度の調整力を集めるためのコストは、需給調整市場を開設したことで約3割ほど低減できたと報告されている。
需給調整市場では、取り扱う調整力の区分を段階的に拡大している。2022年度からは、依頼から15分以内に調整力を供出する「三次調整力①」の取引がスタートした。
一方で、太陽光発電協会(JPEA)は「再エネ自らが調整力を発揮し、需給調整市場において一定の役割を果たすことが、電力システムの全体最適化とコスト効率化には不可欠」として、需給調整市場で取り扱う調整力を、再生可能エネルギーや蓄電池の特性を踏まえた区分も追加してほしいと要望している。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)