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<農業×自家消費>ソーラーシェアリング導入事例|食もエネルギーも地域で自給!
2021/07/27
FITから自立した太陽光発電の普及方法として、各地で導入の進む自家消費型太陽光発電。“営農型自家消費”も誕生している。ソーラーシェアリングでの導入事例をご紹介しよう。
日本全国での展開につながる
新たな融資体制がポイント
耕作放棄地や後継者不足など、日本農業の課題を解決する可能性を秘めた営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)。再エネの普及にも農地の利用は不可欠だ。FITの認定において低圧区分の優遇措置が取られているが、今年3月、神奈川県小田原市にFITに頼らない自家消費モデルのソーラーシェアリングが誕生した。合同会社小田原かなごてファームが開発した「金次郎の里ソーラーシェアリング」だ。
514坪の土地に太陽光パネル200枚を設置し、発電容量は77.8kW。発電した電力は、4km離れた「農家カフェ SIESTA」へ、新電力会社「GGP(グリーンピープルズパワー)」が既存の送電線を利用して自己託送する。地元の有志と共に取り組む営農では、サツマイモや大豆、落花生など多品目を育てる。
発電した電力は、4km離れたカフェへ自己託送する。
本プロジェクトに融資を実行したのは、城南信用金庫と神奈川県信用保証協会の2つ。金融機関が非FITモデルのソーラーシェアリングの事業性を評価し、融資を決定した点が大きい。
「再エネへの融資に積極的な城南信用金庫さんの営業地域にとどまらず、日本各地で自家消費型のソーラーシェアリングを作る前例となるように、今回の融資スキームを整えました」と語るのは、小田原かなごてファーム代表の小山田大和氏。神奈川県におけるソーラーシェアリングのパイオニアだ。遊休農地で育てたみかんを使った「おひるねみかんジュース」や、ソーラーシェアリングの農地で育てた米を使った“CO2フリー”の日本酒を作るなど、エネルギー問題をはじめ地域課題の解決につながる取り組みを粘り強く続けている。
合同会社小田原かなごてファーム代表の小山田大和氏。
「このプロジェクトのコンセプトは、食もエネルギーも地域で自給するということです。農地で作物を、農地の上で電力を生み出し、地域でそれらを消費して、地域での好循環を生み出す。自家消費型のソーラーシェアリングは、災害に対する地域のレジリエンス向上に、ひいてはグローバルな脱炭素化の実現にもつながるはずです」とその意義を強調する。
自家消費型太陽光の先進的な形として、またソーラーシェアリングの新たなあり方として、この事例に続く自家消費型ソーラーシェアリングが日本全国へ広がる未来に期待したい。
DATA
所在地:神奈川県小田原市
発電事業者:合同会社小田原かなごてファーム
融資実行者:城南信用金庫・神奈川県信用保証協会
開発資金:1,885万円(うち接続負担金213万円・国庫補助660万円)
運転開始年月:2021年3月
工事期間:1ヶ月
パネル容量:77.8kW(200枚)
SOLAR JOURNAL vol.37(2021年春号)より転載