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環境省 脱炭素先行地域に12県16地域を追加選定
2023/05/08
環境省は4月28日、二酸化炭素の排出削減をほかの地域にさきがけて進める「脱炭素先行地域」として12県16地域を新たに選定した。過去2回の選定と合わせて32道府県62地域となった。第4回の募集は今年8月頃を予定している。
民間事業者との
共同提案が必須化
脱炭素先行地域に選定された16地域(出典 環境省)
政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。脱炭素先行地域は、政府目標を前倒しして2030年度までの脱炭素化実現を目指す。第1回の募集では、昨年4月に横浜市や川崎市など全国26地域が選定された。第2回の募集では、昨年11月に岩手県久慈市や奈良県三郷町など20地域が選ばれている。第3回の募集には、67の自治体から58件の計画案が提出された。
環境省は4月28日、第3回の選定地域を公表し、山梨県甲斐市や高知県北川村、熊本県あさぎり町など12県16地域が選ばれた。今回の募集から、民間事業者などとの共同提案が必須化された。その結果、エネルギー事業会社や送配電事業会社、施工業者、地域金融機関などと連携が強化され、提案の具体性、関係者との合意形成、事業性の熟度が高い計画提案が多くみられた。
全体的な傾向としては、小規模ながら面的な広がりがあり、さまざまな制約のなかで工夫を凝らして実現可能性を高めた計画提案や、農林水産業・観光・温泉地など、地域の主要産業や特徴的な資源の脱炭素化を図りつつ、その価値をさらに高めようとする計画提案にすぐれたものが多くみられた。
施策間連携モデル
5地域を選定
脱炭素先行地域 施策間連携モデル(出典 環境省)
今回の募集から4つの「重点選定モデル」が新設された。このうち「関係省庁と連携した施策間連携モデル」として青森県佐井村と岩手県紫波町、福島県会津若松市、長野県小諸市、高知県黒潮町の5地域が選ばれた。関係省庁の支援策などを具体的に活用し、脱炭素事業と組み合わせることで、住民の暮らしの質の向上や農林水産業などの地域経済への裨益、より効果的なエネルギーマネジメントによる温室効果ガス削減効果のさらなる向上といった相乗効果が期待される地域が対象。
福島県会津若松市は、電力の需給データなどをAIで分析し、蓄電池の充放電により複数エリア間で需給調整を効率的に行う体制を構築するとともに、内閣府のデジタル田園都市国家構想推進交付金で実装されたデジタル地域通貨などを活用して需要家の行動変容を促す方針。長野県小諸市は、都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画で定める都市機能誘導区域における施設の集約化と合わせて、エネルギーマネジメントを前提とした再エネ導入やマイクログリッドの構築、100%再エネ稼働によるEVモビリティシステム導入に取り組む計画。
地域版GXモデル
2地域を選定
脱炭素先行地域 地域版GXモデル(出典 環境省)
「地域版GXに貢献する取り組み」としては、長野県生坂村と高知県須崎市・日高村の2地域を選定した。自営線マイクログリッド(小規模電力網)などを導入することにより、当該技術の新たな需要を創出し、地域経済への貢献と経済成長につながることが期待できるエリアが対象。
長野県生坂村は、村内唯一の食料品店や災害時の防災拠点と地域の主要産業であるブドウ園をつなぐ自営線マイクログリッドを構築し、系統連系が困難な地域においても再エネの導入・利用を可能とするとともに、レジリエンス強化を図る方針。高知県須崎市・日高村は、点在する遊休地を活用して太陽光発電を導入し、自営線マイクログリッドを構築して、電気から温水を製造・蓄熱して、夜間にトマト栽培ハウスの房に使用する計画。新設した4つのモデルのうち、「複数の地方公共団体が連携した地域間連携」と「民生部門電力以外の温室効果ガス削減に貢献する取り組み」については選定されなかった。
2025年度までに
100地域以上を選定
地域脱炭素の推進のための交付金(出典 環境省)
脱炭素先行地域に選ばれた地域には、1自治体あたり5年間で最大50億円が交付される。環境省は、2025年度までに少なくとも100地域を選び、再生エネやEVの導入などを集中的に支援する。環境省の脱炭素先行地域評価委員会は、「地域脱炭素の波は全国各地に着実に広がってきているが、これを全国津々浦々で力強く展開していくためには、できる限り全国満遍なく先行地域が選定されることが望ましい。都道府県には、自ら管内の市町村を取りまとめて提案することも含め、各層から積極的な提案がなされるよう強いリーダーシップの発揮を期待する。また、電力需要量の大きな都市部の地方公共団体は、再エネ電力確保の難しさはあるものの、日本全体の温室効果ガス削減において非常に重要な主体であることから、積極的な提案を強く期待する」としている。